『仕事はうかつに始めるな』

仕事はうかつに始めるな ―働く人のための集中力マネジメント講座

概要

はじめに

現代ほど、一つ仕事に集中することが難しくなっている時代はない。

一般的なビジネスパーソンは、一時間に30回メールを確認している。集中力が持続するのは平均8秒らしい。情報を消費しているようで情報に消費されてしまっている。

本書は「普通」の状態から「好調」の状態にするための本。そもそも好調でい続けることは難しく、1日4時間が集中力を持続させる限界。多くの人は1時間の集中もままならないので、好調を維持して4時間の集中を手に入れられれば大きな差になる。

第一章 集中できないのは意志が弱いからではない

集中するためのキホンのキの章。

根性では集中できない

集中力 = 意志力 と定義してしまうと、集中力を上げるための処方箋が根性論になってしまう。

締切が近づくと集中力が高まる「締め切り効果」は確かにあるが、締切を乗り越えたらまたもとの集中できない状態に戻ってしまう。これではいつまでたっても集中力が高い状態を手に入れることができない。

集中テクニック① 気を散らせるものを遠ざける

大切なのは「自分を信用しない」こと。物事に集中するために、自分を律さなくて済む環境を作る。

PCの電源を切る、ネット接続を断つ、携帯をカバンにしまう、…etc.

集中テクニック② いやいや始めない

感情と場所はセットで記憶される。ネガティブな感情を持った状態で作業を始めると、その場所にいるだけでネガティブな感情が呼び起こされてしまう。

やる気が出ないときに仕事を始める場所を決めておくとよい。

集中テクニック③ 終わりの時間を決める

仕事を「質」で管理すると、終わりの時間がルーズになる。そうではなく、仕事を「量」で管理する。

仕事の終わりを決めるために、「ポモドーロテクニック」が有効。25分で処理できる仕事の量を理解し、それが何セット取れるかに依って一日のタスクの量が決まる。

没頭しながらリラックス

高い集中力を発揮している状態は、「幸福」を強く感じている。

フロー状態は行為そのものに没頭しながら超リラックスをしているような状態。そこまでのフローは「強いフロー」と呼ばれ、トップアスリートにまれに起こる状態。

本書で目指すのは「弱いフロー」。友達との会話で気づけば数時間経っていたような状態。

時間が止まるような異次元の体験

フローやゾーンと呼ばれる状態が研究の対象になったのは1871年。登山中に山を転げ落ちてしまった地質学者が時間が止まったような体験をしたのがきっかけ。

第三の幸せとしてのフロー

フローという概念が提唱されるまでは、幸せには二種類あると考えられていた。

  • 快楽:Like や Want といった感覚
  • 意味:世のため人のためになることに幸せを感じる

コラム1 「仕事の終え方」についての研究

何かをやり残した状態で仕事を終えると、そのことに気を取られて他のことができなくなってしまう…ツァイガルニック効果

未完了の課題があったとしても、それをどう仕上げるのか計画を立てるだけで、脳はその仕事が終わったと勘違いする。仕事が終わらなさそうなときは少し時間を取って、どうやって終わらせるのかを考えたほうが良い。

第二章 嫌いな上司を思い浮かべると仕事がはかどる?

この章ではフローの入り方について解説する。

フローに入る2ステップ

  1. 強いストレスを感じる
  2. 一気にリラックスする

脳でなにが起きているのか?

古典的には、ストレスが一定程度あったほうがパフォーマンスが高まることが知られていた(ヤーキーズ・ドッドソンの法則)。

ストレスは与えすぎると逆効果になってしまうが、リラックスをストレス時にすることでストレスの悪い側面が抑制されることが発見された。

またフロー時には出ている脳波が普段とは異なる。

  • 普段:シータ波 -> ベータ波 -> アルファ波
  • フロー:高シータ波 & 低アルファ波

フロー時にはひらめきの下準備をするガンマ波もでやすくなっている。

集中度を測定するデバイス

集中力を測定するデバイスがなかったので、作った。

JINS MEME|TURN IT ON - 見るから、知るへ。

測定しているのは、まばたき。

  • まばたきの量:集中しているときにはまばたきは少なくなる。
  • まばたきの質:リラックスしているときにまばたきは安定する。

曜日や時間帯によって集中力に波があることがわかった。

プロゲーマーのフロー

プロゲーマー二人に協力してもらい、格闘ゲームをしているときの集中とリラックスの状態について測定してみた。

二人は全く集中やリラックスの仕方が異なり、そこから今後どうすればよりフロー状態を維持していられるか推測ができた。

常に計測をしておく必要はないが、計測することで自分を客観視して改善ポイントを見つけられる。

恐怖や怒りを感じたらチャンス!

強いストレスを感じた後にリラックスすると高い集中力を得られる。この時必要なストレスとは、「強い感情」のこと。ポジティブでもネガティブでもOK.

リラックスは呼吸から始まる

息を吸う時は交感神経が、吐くときは副交感神経が優位になる。リラックスしたい時は息を深く吐くことが大切。

深く呼吸をするためには背筋を伸ばすことが大切。背中が曲がっていると浅い呼吸になるだけでなく、首や肩も痛めてしまう。

きれいな姿勢を作るためには「足の裏をしっかり地面につける」「骨盤を立てて座る」の二点が大切。お手本は坂本龍馬

集中力アップは椅子選びから

一般的にオフィスで使われている椅子は、どんな姿勢でも負担がかからないように設計されている。しかしその分背筋が丸まってしまいやすい。

というわけで作られたのが、背もたれの小さい椅子。

腰痛の予防・姿勢改善の学習イス「坐骨で座る」アーユル チェアー メーカー公式販売サイト

コラム2 感情は王様、理性は家来

人間の脳の構造は3つに分かれている。

脳内で絶対的な権限を持たされているのが大脳辺縁系。まさに王様。

王様を静かにさせる方法が「マインドフルネス」。

第三章 小さな目標を立て続ける

この章は、フローに入り続けるための方法を伝える。

抽象度が高くなるので注意。

大きな夢より、小さな目標

フローに入り続けるために必要なのが、「小さな目標」を立て続けること。目の前の仕事に対して、小さな目標を立て続ける。

大学合格などの中長期的な目標ではない。「この会議では2回は発言をする」とか。

小さな目標 = 簡単な目標ではない。簡単すぎると脳は飽き、没入できない。逆に難易度が高すぎると不安や諦めが集中を阻害する。

一万時間の法則から学べること

一万時間の法則…超一流と呼ばれるレベルまで到達するためには一万時間の努力が必要

ただ漫然とやる努力ではなく、以下の条件を満たす努力を積み重ねる必要がある

  • 他者の視点で設計された具体的な計画がある
  • 反復可能なことである
  • 結果へのフィードバックが継続して得られる
  • 精神的に負担があり、集中が要求される
  • 面白くない、苦手なことへの取り組みである

要は、小さな目標に対する取り組みを一万時間行うということ。

トップアスリートに学ぶ小さな目標の立て方

為末大さんと協力をして、目標設定について2つの問を追いかけた。

  • 長く活躍した選手は、短命に終わった選手と比べて、目標設定に違いはあったか?
  • 限界にぶつかったとき、それを乗り越えた選手はどのような目標設定をしたのか?

すぐにわかったのは「大きな夢を持っていないアスリートがいない」こと。

これは当たり前なことだったので、すなわち「大きな夢ではない、別の目標設定法があるはず」ということも導かれた。

小さな目標は二段階で設定する

動機には「内的動機」と「外的動機」の二種類がある。

  • 内的動機:楽しみや意味など
  • 外的動機:お金や昇進など

従来の組織心理学では、外的動機よりも内的動機が高いパフォーマンスに関連するとされている。外的動機はある程度達成されるとモチベーションが減っていてしまう。

多くのアスリートは、まずは内的動機(スポーツが楽しいなど)からその競技をはじめている。最初は内的動機でどんどん上達していき、そのうちにパフォーマンスが上がってくると「一流になりたい」という外的動機が芽生え始める。そしてそこから、大きな夢に向かって小さな改善を積み重ねることで成長を続けていく。

始めるときは内的動機だったとしても、次第に外的動機に切り替えていくことでパフォーマンスを高め続けられる。

成長の限界のその先へ

小さな改善を積み重ねていると、いつか成長に限界が来る。そこから必要なことは、「他分野からの学び」。

そこから更に原点回帰して、始めた当初の遊びの気持ちにまで至るとさらにパフォーマンスを高められる。外的要因からの逆算では到達できない高みまで到達できる。

第一線で活躍し続けている人は、毎回違う目標を設定し続けながら、飽きたり疲れたりしないように自分をコントロールしている。

漫然と続けても成長はない

ここまではアスリートを例に出して来たが、ビジネスパーソンでも事情は同じ。外的動機に基づいた小さな改善を繰り返し、一定の限界を感じたところで内的な動機に向きあい、他分野からの学びを得ながら確信へと向かうプロセス。

一連のプロセスで大切なことは、不断の試行錯誤。小さな目標を設定し続けられた人がパフォーマンスの向上をし続けられる。

まとめると、フローに入り続けるための秘訣は、小さな目標を立てること。

コラム3 リカバリーと集中

トップ選手と一般の選手を分かつのは、一つ一つのプレーが終わったあとに「いかにリカバリーし、集中力をたかめるか」ということ。具体的には次の4つを行っている。

  1. ポジティブな言葉かけをする
  2. (肉体/感情の)リラックス
  3. (これから起こることを)頭のなかでリハーサル
  4. 動作に入る前のルーティン

第四章 考えるためのプロセスを定型化する

この章では、フローに入るための前提条件について考える。

フローの前提条件とは?

一万時間の法則のあたりの話で、集中して物事に取り組むためには「反復可能である」ことが挙げられていた。これはもう少し噛み砕くと、「プロセスが定型化されている」ということ。

私たちは普段考える仕事をしているので、考えるプロセスを定型化する必要がある。

そしてそのためには、「そもそも考えるとは何か?」という問に考えを巡らせる必要がある。

「考えるとは何か?」を考える

世間には考えることを体系的にしたものがいくつもある。

ただここで扱う「考える」とは個別の個別の思考形態を指すのではなく、より一般的なプロセスを指す。

抽象的に考えておくことで全体像を捉えやすくなる。遠回りに見えて実は近道。

問を細分化する

あまりにも抽象的な問だと思考が進まなくなる事がある。そのときに大切なのが問を細分化すること。今回であれば、例えば時間軸で細分化することができる。

  1. いかにして考え始めるのか
  2. いかにして考えを進めるのか
  3. いかにして考えをまとめるのか

ただしここではこの細分化は用いず、考える内容で細分化していくことにする。

「考える」領域を3つに分けてみた

ここで細分化するために用いた軸が、Primitive - Complex という軸。具体的には次の3つに分類できた。

  • 前例のない挑戦(Primitive)
  • 中間領域
  • やり尽くされた領域(Complex)

これらの分類を「自由度」と「情報量」という2つの指標で表すと、次のようになる。

  • 前例のない挑戦:情報量は少ないが自由度は高い = 直感が大切になる
  • 中間領域:情報量も自由度もそれなりにある = 論理が大切になる
  • やり尽くされた領域:自由度は低いが情報量が多い = 大局観が大切になる

考えるプロセス6パターン

先ほどの「直感」「論理」「大局観」には、それぞれ対になる考え方が存在する。

  • 直感 ⇔ ひらめき
  • 論理 ⇔ 経験
  • 大局観 ⇔ バイアス

考えるプロセスは、大きく分けてこれら6パターンに分類することができそう。アウトプットが出せればどういった方法でも良いが、前者の3つがより安定した思考パターンで、後者の3つがより不安定な思考パターンと捉えることができる。

コラム4 構造を発見する「すごいブレスト法」

濱口秀司さんいわく、三段階でブレストをすれば比較的容易に大局観に至ることができるそう。

  • レベル1:アイデアをとにかくたくさん出す
  • レベル2:視点の発見を目的にする。レベル1で出たアイデアについて、どういう視点から生まれたものかを考えてみる
  • レベル3:レベル2で発見した視点がどういう構造から生まれたのかを考える